んむすば(首里・南方詩人)

◆二つの沖縄そば
 僕の勝手な思いこみにすぎないかもしれないが、沖縄そばには二つの系統があることが明らかになったと思う。
 一つは中華麺を原料とする現在の沖縄そば。もう一つは、芋を原料とするウムクジそば、である。
 これらの『そば』はルーツを同じくするのではなく、独立した食品として沖縄に伝わり、発展したものと思われる。あるいは、ウムクジそばは、そてつ料理の応用として誕生したものかもしれない。
 しかし、なぜ芋そば、ウムクジそばは忽然と消えてしまったのだろうか?
 何か問題がなかったかどうか考えてみよう。まず味。
 ウムクジそはは、実際に作って食べてみると、淡白なだが、けっこうおいしい。ロクベエもそうだが、ツルツルした食感が、食欲をそそる。なんといっても、お芋を原料としていることで、非常にヘルシーである。いろんな人に食べてもらったところ、40代以上の方には非常に好評だった。しかし、20代の若い方には、今ひとつ、という意見も少なくなかった。世代による食習慣、味の傾向もあるかもしれないが、世代によって反応にかなり明白な差があったことは驚きだった。しかし、それはウムクジそばが廃れた原因ではないだろう。
 次に作り方。
 お芋麺は、小麦粉で作る麺にくらべて作るのにそれほど手間もかからない。ウムクジとして乾燥させ、長期保存も可能である。手が込んでいれば次第に作られなくなるだろうが、家庭でも普通に作ることができるので、むしろ残っているはずの料理である。
 良いことづくしのウムクジそばなのに、なぜ消えてしまったのかよくわからないのである。おそらく、大量生産が難しかった、というのはあるだろう。あるいは、生活が豊かになるに従って、芋自体が食卓から遠ざかっていった、ということもあるかもしれない。

 ともかく、ウムクジそばは沖縄から消えた。幻の沖縄そばとなってしまった。しかし、ウムクジそばには、本当の沖縄らしさがある。外観も原料も素朴で、ただあるがまま。体にもやさしく、食感もやわらかで食べやすい。こんないかにも沖縄らしい個性的なそばを、歴史の彼方に葬ったままでよいのだろうか?
 僕にはあまりにも残念なことに思える。沖縄で培われた食文化の一つとして、また、沖縄の名産の一つとして、このウムクジそばに光を当て、もう一度その価値を見直す必要があるのではないだろうか。
 歴史の藪の中に捨てられたウムクジそば、んむすばが、いつの日か、藪の中から救い出され、新たな光を浴びるが来ることを夢見るのである。
 

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