古酒スパイス
まずは、実際に作られている古酒カレーについて。
現在、通常メニューとして出されている古酒カレーはわずか一種類のみだ。近い将来のメニューとしていくつか控えているが、現在はただこれ一種類を全力をあげて作っている。
古酒カレーの特徴は、まず、そのスパイスにある。通常のカレーは、調合されたものを使用しているが、古酒カレーはクミン、ターメリック、クローブなど二十種類あまりの原料を一品々々調達して、独自に調合している。さらに、沖縄産のウコン、ゴーヤー、月桃、ニガナ(根)、ウイチョーなど、他では決して使われることのない特殊な原料を用いている。
しかし、なんといっても一番大きな特徴は、古酒カレーというその名の通り、スパイスを古酒で練り込んで作っているという点である。
なぜスパイスを古酒で練り込むのか?
それは、アルコールには、スパイスを熟成させる作用があるからだ。梅酒をイメージしていただきたい。一定期間、梅を酒につけ込むことで、梅も酒も熟成し、味が驚くほどまろやかでおいしいものになる。スパイスも古酒で練り込まれることによって熟成し、カドが取れ、えぐみが抜け、それが本来持っていた味わいが引き出された上で、マイルドに変容する。
オーケストラにたとえれば、スパイスを練り込む古酒は、オーケストラをまとめあげる指揮者のようなものだ。楽器(スパイス)がそれぞれ好き勝手に演奏していれば、全体としての演奏はおかしなものになってしまう。演奏というものは(やったことはないが)、各楽器が反発しあうことなくまざりあい、融合し、熟成することによって成り立っている。それと同じように、古酒スパイスも、指揮者である古酒によって、各スパイスが混ざり合い、熟成し、一つにとけあうのだ。
この『指揮者』の存在が、古酒カレーと他のカレーの決定的な違いである。
生のままの梅と、アルコールに漬け込んだ後の梅を想像していただきたい。
味の違いは明白である。